中学受験を終え卒業までわずかとなった6年生が、本校の特色のひとつである「子ども哲学」の授業に臨みました。講師としてお迎えしている関東学院大学教授の杉田正樹先生がファシリテーターとなって進められた話し合いのようすをご紹介します。
(授業は1回が2時間つづき、2週にわたっておこなわれました)
まず、今回の「哲学」でみんなと考えたいテーマをあげてもらいました。
①死んだらどうなるか。
②地球はいつまで続くのか。
③天国と地獄はあるのか? 最低限どれくらいの悪さで地獄へ?
④宇宙は無か? 宇宙の起源? 無から何か物が生まれるのか?
⑤失敗は成功の母というが、ずっと失敗し続けると成功と言えるのか?
⑥人の性別はなぜ2つあるのか? 変化する生き物もあるが、やっぱりオスとメスになる。
⑦言葉とは何か? 言葉はなぜあるのか?
⑧なぜ神さまは人間をつくったのか? 人間がいなくてもよかった。人間は悪さをする。地球環境を維持するためには人間はいらないのではないか。
⑨なぜ人は生きるのか? 何のために? 人間の生きる目的は?
⑩AIは将来どこまで発達するのか?
⑪人間は進化の途中なのか? これからどうなる?
⑫平和とは何か?
⑬強いとは何か? 何をもって強いというのか?
⑭なぜ学校にスクールカーストが起こるのか。クラス内に権力が生まれまるで猿の世界のようになることはあるのか?
⑮なぜ感情があるのか? なければ、ケンカはなくなるのでは?
⑯ゲームはなぜ楽しいのか?
⑰ゲームはどこまで発達するのか?
おとなも一緒に考えたくなる興味深いテーマが並びました。
この中からみんなで考えたいテーマを決めるため投票したところ、①「死んだらどうなるか。」が第1位となりました。ちなみに、第2位は⑮「なぜ感情があるのか?」でした。
話し合いが始まります。とっかかりは「眠ることと死ぬこととの違い」は?
・眠りは朝起きるけど、死んだらもう二度と起きない。夢はみないですべての機能が停止する。天国と地獄は夢なのか?
・夢はレム睡眠で見る。死んだら目が動かないから天国と地獄は夢ではない。睡眠と死はちがう。
・死んだら魂が抜けてどこかへ行く。誰か偉い人(神さま?)が行先を決めている。
・死ぬしか知る方法はない。死んだら分かる。でも、もし分からなかったら?
・キリスト教の教えでは天国と地獄がある。そこでも生き続ける。
・今が夢かもしれない。今見ている夢のほうが本当の世界。目が覚めたら元にもどるということがあるかもしれない。今が夢ではないと証明できるか?
・死ぬという怖さを天国と地獄という人間の考えた妄想におしつけている。天国に行けるなら安心。昔は、悪い人は地獄へ行く設定がないと成り立たない世界だった。今とちがって日常的に死体を見ている。その怖さがあった。天国に行けるという設定をしないと安心できない。だから宗教が生まれた。
・死んだら「無」の世界に行くほうが地獄よりも怖い。無の世界には自分しかいない。地獄にならだれかがいる。
・地獄があるとは信じられない。
・死は全員が体験するもの。死んで天国と地獄に生きるかもしれない。ないかもしれない。分からない。
・昔の人は、なぜ天国と地獄を信じたのか?
・人間は不利な情報を聞くと信じる生き物。天国と地獄も昔の都市伝説。だから信じてしまった。死ぬのが怖いという感情をおさえるために物語ができた。魂の行き場があるということが安心。
・死ななくても地獄に行けるかもしれない。金縛りが意外と楽しかった。
・何もないよりは地獄のほうがいい。
・天国と地獄のどちらかに行くと聖書に書いてある。絶対天国のほうがいい。神の宮がある。罪を悔い改めてそこに行ける。
・天国に行って何をするのか? →いい生活で生き続ける。
・無とは何か? 無の中にいたら、自分がいるか分からない。無というものがあるのか分からない。無の中には感情もない。怖いということもない。無の世界に人間はいられない。無の中の「私」はあり得ない。だからその世界は怖くない。
・無の世界とは、自分以外いない世界。自分を見ることはできない。感情だけがある。死んだら体は土にもどる。
・無の世界にいたとしたら、何もないから無の世界だと分かる。体もない。感じるだけ。感情だけがある。
・無の世界も人間が考えたもの。宗教もずっと考え続けられた都市伝説だと思う。人間はそれを信じないと生きていけない生き物だから。
・天国と地獄、無の世界はどこにあるのか? →どこにあるのか分からなくても、ある。
・今が今とは分からない。今の意味とは? 「今」といつでも言える。全部今と言えるか?
4年生のときから学んでいる哲学の授業を子どもたちはとても楽しみにしています。正解・不正解がなく、考えることが楽しいから、と言います。日常のふとしたことに立ち止まり、自分なりの考えをつくっていく。これから進んで行く答えのない社会で生かされる時間を経験しています。